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ガンダムSES 第1話 『白い反逆者』 (4) 

 翌日、2273年3月2日、WR本部地下5階。

 地下4階はWRの戦闘訓練場として建設された、地下2階に存在する兵器格納庫の3倍高さを誇るこの訓練場は、出力を訓練用に最小限に抑えたなら、ビームサーベルとビームライフル―――最も、模擬戦ではビームライフルはペイント弾を装填して使用するのが殆どだが―――を使った訓練も可能だ。

 訓練場の壁も特殊装甲が何重にも重ねてあるため、先述の出力程度のビームなら直撃しても焦げる程度で済むし、かなりの勢いでMSが壁にぶつかっても耐え抜くほどの強度を誇るため、新人パイロットのための訓練場として使われたり、ベテランパイロットたちが腕を訛らせないための模擬戦に使われる。

 この訓練場には別室でトレーニングルームや射撃場まで備えるため、兵種問うことなくここでの訓練が可能である。

 よって、常にこの訓練場には、派手な物音と、地方都市の商店街程度の人影は深夜を除いてずーっとある。

 そんな訓練場で、これから新しくWRに入ってきた新人パイロットと、WR本部のトップエースの1対1による模擬戦が行われる。最も、その2機の機体はこの訓練場にはまだ存在していないが。

 この訓練場とある場所では、このバトルをギャンブルの対象にでもしようと言うのか、あちこちでタバコやら菓子やらの単語が聞こえていた。どうやらレートなのだろう。

 敵国の領土で活動し、かつそれを絶対に敵に気付かれてはならないとあって、物資の補給は必要最小限、かつ十分に戦える低殿のものに抑えられているために、タバコや菓子と言ったものは、この本部ではなかなかの貴重品だ。

 こういった観客達は、訓練場上部に設置してある休憩室、WR本部の構成員たちが呼ぶ、またの名を観客席にいる。ここは特殊強化ガラス越しに下の訓練の様子を観覧することができ、そしてソファーや自動販売機なども設置されている、正に観客席といえる場所だったりする。

 そして、この訓練場を見押せる場所は、ここだけではない。

 この休憩室の反対側には、壁に貼り付けてある多数のモニター群や、PCが鎮座してある、休憩室の三分の二ほどの広さを持つ場所がある。

 ここは訓練場管理室と呼ばれる部屋で、MSの模擬戦を行う場合は、ここで模擬戦参加機の管制と、ダメージ判定、撃墜判定などを行って対戦機に送ることができる機能を有している。

 さらに訓練場で模擬戦を行うMSの操縦系統の一部の回線は、この管理室が管理しており、緊急時における強制停止や強制操縦なども行うことができたりするが、今のところ使ったことはない。

 そんな場所に、本来は地下4階の司令室で職務を行っているはずの、WR司令官の妹である司令室室長、美坂栞がいた。
 香里の指示でここで今回の模擬戦管制を行うことになっていたからである。

 その栞は模擬戦に向け、2機の操縦系統に繋ぐためのプログラミングや、訓練場の設備に異常がないかどうかなどのチェックをしている。

 現在司令室の指揮は副室長に委譲されているため、上を気にする必要は、今はない。

 忙しくキーボードやマウスを動かしたり、ディスプレイの映像とモニターが移す映像を見比べたり、それを使って分析したりと大忙しだ。先ほどの居眠りも致し方ないほど、WRで一番忙しい人たちの1人かもしれない、と後に司令室に勤務する人たちの仕事振りを聞いた祐一が思うのはまた先の話だ。

 そこに、この管理室に通じる直通エレベーターがこの階で止まり、中から2人の女性が管理室へと入ってくる。

 1人はWR司令官、美坂香里。もう1人はWRパイロットの1人である水瀬名雪だ。


「栞、ご苦労様ね。何か手伝えることがあったら手伝うわよ?」

「えぅー、来るのが遅いです。あと少し早く来てくれれば、楽だったのに」


 もう1人でやった方が効率のいいところまで終わっちゃいましたよ、と栞は非難めいた視線を香里に送った。
 香里は苦笑いで、


「ごめんなさい。あたしもさっきまで残務を片付けてたの。名雪もさっきまで機体の整備の手伝いをしていたらしいから」

「ごめんね、栞ちゃん。柊さんに、人手が足りないから手伝ってくれ、って前々から言われてたんだよ」


 香里の謝罪に続いて名雪もそう言う。これを聞いて栞は少ししまった、と思った。

 どちらもWR本部を構成する重要役職についている2人だけあって、それなりに毎日が忙しいのは栞も知っているため、あまり突っ込んで抗議するわけにも行かない栞は、それを聞いて少しふてくされるしかなかった。


「それは、そうでしょうけど……。こっちだって忙しいんですよぅ……」


 そう言いながらも、キーボードを叩く指は一瞬も止まることもなければ遅れることもなく、ミスをすることもない。栞のプログラミングに関する技術の優秀さがその手際の良さに現れているようだった。


「ごめんね、次に時間が出来たら、今度は栞ちゃんを手伝うよ」

「い、いいえ。名雪さんも忙しいんですから、時間が出来たんなら休んでください。パイロットなんですから」


 先ほどの、2人の激務を忘れての皮肉を少し後悔してか、少しだけ照れくさそうに栞は名雪の提案を遠慮した。

 でも、それでは納得しない名雪は栞のすぐ後ろまで歩いていき、両手で両肩をぽん、と持ち、


「栞ちゃんだって、室長だよ。大変なのはお互い様なんだから、ね」


 笑顔でそう言った。栞の手が止まり、近くにある名雪の顔をすこしだけぽかんと見つめる。


「栞、人の親切は素直に受け取っておくものよ」


 香里も後ろから言う。栞はぽかんと見ていたその顔を慌てて再び目の前のディスプレイに戻した。その頬はすぅっと赤くなっている。名雪もそれを見て栞の肩から手を離した。


「じゃ、じゃあ、本当に名雪さんにやることが無くなったとき、本当に時間が空いたとき、お願いします」


 栞はやっぱり照れくさそうに、ディスプレイから視線を外すことなく、手のキーボードを叩く動きも止めないまま、言った。


「うん、任せて」


 名雪も、笑顔でそう答えた。


「あたしも、今度コーヒーぐらいなら、奢ってあげるわよ」


 香里が後ろからそう言った。しかし、栞はそれを聞いたとたん、悲しそうに溜息をつく。香里が慌てて口を開く。


「な、何よ、その溜息は」

「だって……」


 栞は手を止めて、悲しそうな視線を香里に送った。香里はその視線に射抜かれた……ように感じた。
 その姿を認めて、すぐに栞は再び視線と手を元に戻す。


「べっつにー。名雪さんに比べて、随分無骨で無神経な親切だなー、なんて思ってませんよーだ」


 明らかに怒ったような口調で栞は言う。

 それを聞いた名雪は再び苦笑いで乾いた笑いをすることができない様子で、その厳しい言葉を浴びせた栞は後ろの様子など気にもしない様子で作業を続け、浴びせられた香里は、はぁ、と呆れたような溜息をついた。


(少しは成長したかと思ったけど、まだまだ子供だったのね……)


 香里は頭を抱えて、そう思った。

 そして、その思考を遮るかのように、管理室の備え付けてあるスピーカーが雑音を響かせ始めた。どうやらここへ通信を入れたものが要るらしかった。一瞬の雑音の後、声が聞こえてくる。


『格納庫から訓練場管理室、聞こえるかな』


 それはWR整備隊チーフ、柊勝平の声だった。彼の声にまじって色々な音や声が聞こえてくるが、おそらく格納庫で聞こえている掛け声とか、作業中に出る騒音とかだろう。

 ヘッドセットをつけている栞が、その通信に応じる。


「こちら管理室です。聞こえていますよ、柊さん」

『ああ、その声は栞ちゃんだね。2機の機体整備、外部点検及び機器点検が全て終了、全ての良好オールグリーンを確認したよ。いつでも下ろせる』

「了解しました。管理室から司令室、聞こえますか、美汐みしおさん」


 栞は、今、司令室の指揮を執っている司令室副室長、天野あまの美汐みしおの名を呼んだ。応答はすぐに返ってくる。


『こちら司令室です。聞こえています、室長』


 ちなみに、確かに便座上の地位は、無線の向こう側にいる栞と同い年の少女、美汐より栞が上だ。

 が、2人の仲はそんな口調今更だろ、と言えるぐらいの仲だ。

 さらに言えば管理室にいる香里や名雪とも普通に話すし、そもそもWR本部にいる人間全てが友人みたいなものだから、堅苦しい敬語は使わないことが暗黙の了解となっているこの組織だ。

 しかし彼女は無線や人前では、名前で呼ばずわざわざ役職名を使う少数派だったりする。

 ちなみに、栞は無線でも普通に呼ぶように何度も美汐に言っているが、既に諦めていたり。

 まぁ、それはともかく。


「格納庫が対戦機の整備完了を報告してきました。ビッグ・エレベーターに異常はありませんか?」


 ビッグ・エレベーターとはMSやMAなど大型兵器を運ぶためのエレベーターの通称で、本部内にいくつも存在する、人が利用する普通のエレベーターと区別するための呼称だ。


『確認しました、異常ありません。これより2機をそちらに下ろします』


 ちなみに、司令室はこのWR本部の大型機械のコントロールを全て握っているおり、大型機械の制御は全て司令室が行っている。

 それが、司令室の仕事増やしているひとつの原因でもあるのだが。


「了解。ビッグ・エレベーターの作動を確認、これより訓練場への警告放送を開始……警告します。まもなく、ビッグ・エレベーターが訓練場に到着、その後、MS模擬戦を開始します。訓練場にいる人員はすみやかに……」


 栞は訓練場内のスピーカーに繋がるように切り替えて、訓練場にいる人員に退去するように放送している間に、香里と名雪は別のヘッドセットを取って、それぞれの相手に通信を繋いでいた。


「管理室から“レジスタンス”。聞こえる?」

『その声は名雪か、こちら“レジスタンス”』


 名雪のつけているヘッドセットから聞こえてきた、祐一の声が名乗った“レジスタンス”とは、暫定的に付けられた祐一のコールサインだ。

 機体に乗っている以上、もう名前で呼ぶことは基本的には禁止で、コールサインで呼び合うことになっているのだが、祐一は普通の名雪の名前を呼んでいた。

 教えたはずの名雪のコールサインを覚えていて、わざと名前を呼んだのか、またはコールサインを忘れたのか、どちらなのか分らないが。

 ちなみに、ビッグ・エレベーターは重量の半端ない兵器を運ぶために、割とゆったりと動いていくために、地下2階から最下層である地下5階まで降りるまでには割と時間がかかったりする。


「もう、機体に乗っているときは無線ではコールサインで呼び合わなきゃいけない、って言ったのに」

『細かいことは気にするな。それより、そっちの準備は整ってるのか?』

「うん、もうばっちり。レートは3:7だって」


 ちなみに、相沢のレートは前だ。

 実力が未知数の祐一に掛けるのはいささか分の悪いギャンブルだ、とでも思った者、それとも祐一の対戦者の実力から判断した者の比率もレートと同じくらいだったりする。


『げぇ。そのレートからすると、あいつってそんなに強いのか』

「そりゃそうだよ、ダブルエースだもん。あと2機でトリプルエース。凄いよね~」


 名雪のゆったりとした口調では、その凄さもいささか価値が下がるような気がしないこともなかったが、とりあえず、相手がダブルエースという事実には驚く。

 ちなみにエースとは、敵機を沢山落としたパイロット与えられる勲章みたいなもので、5機でエース、10機でダブルエース、15機でトリプルエースとなる。

 つまり、相手は13機撃墜の実績を誇る、WRきってのトップエースの1人なのだ。


『ダブルエースか……。相手にとって、不足なし、か』

「頑張ってね、祐一。わたしは祐一を応援するよ」

『おう、頼むぜ、名雪。どれだけ戦えるか分らんが、できるだけやってみるさ』

「ふぁいと、だよ。じゃあね~」


 そこで、通信は切れた。名雪はヘッドセットを外してもとの場所に戻すと、部屋の奥へと歩いていって、特殊強化ガラスのすぐそばで座って管理を行っている栞の隣に並ぶように立ち、下のMS搬入口を見つめた。

 彼女も彼女で通信を終えた香里も、その名雪の隣、強化ガラスを通して見下ろせる位置に立ち、名雪と同じように搬入口を見つめる。そこに、2人のMSが降りてくるからだ。

 ここで、視点はWR所属、神聖アジリア大帝国製第2世代MS、GD-5“カース”のコクピットにいる祐一に移る。




『―――ビッグ・エレベーターの動力停止までのカウントダウン。8,7,6,5,4,3,2,動力停止』

「エレベーターの停止を確認。これより訓練場内、目標ポイントへ移動する」

『司令室、了解。これより、“レジスタンス“は訓練場管理室の管制下に入ってください』

「了解……。なあ、いつになったらお前の名前を教えてくれるんだ」

『“レジスタンス”、模擬戦とはいえ任務中です。私語は謹んでくさい。それでは幸運を』


 それを最後に通信が切れる。


「へいへい……」


 そう呟いて、思わず祐一は溜息をついた。

 先ほどまでの、祐一との事務的過ぎる会話の相手、司令室副長である美汐が、MSに乗って格納庫から降ろされる時から、この訓練場までの祐一の管制官を勤めていたのだが、一瞬エレベーターが動いている間に交わした名雪との通信とは到底似ても似ないものだった。

 最後の励ましの言葉も、先輩にでも言われたことを愚直に護っているものなのか、それともマニュアルにでも書いてあったことをそのまま言ってるとしか思えないほどの冷たい励ましだ。

 これだけで、祐一は美汐の性格を大分把握できている気がした。


「堅物、っつーか、おばさん臭い、っつーか……」


 思わず口に出してしまうほどの、そんな事務的過ぎる性格だ。無論、そんなことで祐一は嫌ったりはしないが、少なくとも人を余り寄せ付けることはないのだろうな、と祐一は相手の女性の交友状況を想像する。

 祐一の想像は間違いでなく、実際美汐は栞などの一部の旧知の存在を除いて、殆ど最低限の会話しか成り立たない。

 しかし、(これは今の祐一はまだ知らないことだが)その美貌から近寄りたい兵士達は少なくなく、その度この美汐に一刀両断されるのは日常茶飯事であるとかないとか、らしい。

 あとで栞に、どんな人物なのか訊いておくべきだろう……とここまでなら、最低限の付き合いのための将来を思案する程度が普通の思考だろう。しかし、祐一は違う。だからこそ祐一は燃え上がる。

 これは祐一にとって、WR入団の試練のひとつなのだ。周りが敬遠しそうなそんな人物と友人になってこそ、自分はここでやっていける自信がついていくはず―――のような気がした。

 そんな人物こそ、名雪みたいな性格―――とまでは行かないが、せめて自分とは社交的に話せるようにしてやる―――と祐一は通信の切れた後、拳を握ってそう誓う。

 そんな誓いを立てた祐一の姿は、いつもよりかはいくらか輝きを増しているようだったが、コクピットの中にいるのでは、どんなに輝きを増しても、どんなポーズを取っても映像通信を繋げない限りは誰もその輝きを見ることは出来ないが。


『こちら訓練場管理室、“レジスタンス“、聞こえますか』


 と、ちょうど祐一が拳を握り締めていたタイミングで管理室の栞からの通信が繋がった。

 しかも映像通信なために、祐一のポーズがばっちりとあちらには映っている。

 怪訝そうな顔を傾けた、栞のその視線は、「何をしてたんですか?」と問いかけてきているようだった(実際そうなのだが)。

 さすがの祐一もばつが悪かったらしく、握り締めていた右手を操縦レバーに戻し、こほん、と咳払いを一つする。そして、


「どうした?」


 と、通信ディスプレイに映る栞の姿に声をかけた。

 栞の怪訝そうな表情は少しの間変わることはなかったが、一瞬の見つめ合いの後に、栞も仕切りなおしのように咳払いを一つして、口を開いた。


『模擬戦に先立ち、これより“レジスタンス“の操縦系統の一部を、こちら管理室の支配下に置きます。こちらの指定する回線に接続してください』

「了解した」


 祐一は栞に言われたとおり、緊急再構築用プログラミング用キーボードを引っ張り出して、それを指で叩き始める。

 MSパイロットにはこう言ったプログラミング技術も要求され、一流のMSパイロットになるための道のりは、普通の航空機パイロットになる道のりより格段に険しい上に長い。

 学ぶ内容や操縦技術なども、この2つは全く変わってくるが、それでもより高度な技術を要求されるのはMSパイロットと言えるかもしれない。

 無論、通常航空機の中にも、かなり高度な技術を要求される種もあるが、今は関係ないだろう。

 数分後には、管理室の回線が管制し、一部の操縦系統が管理室の支配下となる。ちなみにこれについての詳細は、格納庫での最終点検時に、勝平の口から既に聞いていたりする。

 操縦系統の一部の管理室への移譲が住んだことで、祐一の模擬戦の準備は一通り完了した。

 祐一は最終点検がてら武装の再チェックをすることにして、いろいろな機器やボタンを操作して点検していると、そこへ再び通信が聞こえてくる。

 今度は祐一へのものではなく、祐一の模擬戦の相手へのものだ。

 それに気付いた祐一は、祐一の機体が乗ってきたものとは、また別にもう一つ存在する、正面の搬入口に目を向けた。

 既に相手パイロットも知っているし、その機体も知っている祐一に、これから初めて聞く、または驚くべき事柄なんて、戦闘開始までは出現しないことは分っているが、それでも何となく相手の登場には興味が湧いた。

 まるで、ボクシングのタイトルマッチで、挑戦者を待つ王者のようだ。

 最も、挑戦者は今待っている祐一であるが。


『ビッグ・エレベーターⅡの停止までのカウントダウン……7,6,5,4,3,2,停止』


 美汐ではない、また別のオペレーターの声のカウントと共に、ビッグエレベーター2号機の動力が停止。

 まだ少し、残りの道を残していたエレベーターは、短いながらそこまでは惰性の旅だ。どんどん速度が低下、やがてそのエレベーターは特殊装甲製の床に着地すると同時に、エレベーターの速度が丁度ゼロになったかのように、祐一には見えた。

 先ほどまで自分は同じものに乗っていたとはいえ、こうやって見ると随分と凄い仕組みのエレベーターだと思う。

 かつて、とある東洋の国にあった特急列車の運転手は皆、cm単位での正確な停車を当然のように行っていたと言うが、正にそれだろうか。

 ともかく、その技術に少し祐一は尊敬の念を抱くかのような気持ちになる。

 やがて、完全静止したそのエレベーターに乗っていた模擬戦相手のパイロットを乗せたMSが、訓練場への第1歩を踏み出す。

 超巨大な、超重量のMSが1歩踏みしめるごとに、大地揺れ動くがごとくの振動が発生するが、何重にも重ねた特殊装甲壁(床)はそれをものともせずに耐えてみせる。見事な技術と、強度だと思う。

 搬入口は薄暗く、その巨大なMSの全貌を見るのは暗すぎたが、2歩、3歩とそのMSがこの訓練場に入ってくるに連れて、その全身はどんどん現れていく。

 祐一の機体“カース”と同じく、WRオリジナルペイントである真っ白に塗られたその機体。

 独特の頭部と、その厚い装甲に覆われた、“カース”に比べれば頑丈そうなその全身。

 背中に2本のビームサーベルを差し、そして肩に掛けているビームライフル。



 南アジリア共和国第2世代MS、ZAK-4“クラン”。

 世界各国が開発した中でも、最高レベルの性能とされる、南アジリア共和国が開発した傑作機。

 そして、さらにその真っ白な機体の右肩に描かれている、そのエンブレム、緋色の星スカーレット・スターが、この機体の存在感を一層高めていた。

 このエンブレムが示すのは、WRが誇る、通算13機撃墜のダブルエースのパイロットの存在。


『“スカーレット・スター”から“レジスタンス”、改めてよろしくっ!』


 そんな自分の実績を自慢することなんて頭の片隅に塵ほどもなさそうな、そんな屈託のない、明るい声の挨拶が祐一のコクピットに通信を通して響き渡る。


「ダブルエース……。13機撃墜の通称“赤雪あかゆき”の力、楽しみだぜ、“北川”」

『俺もだ。新入りにして帝国の最新鋭機を受け取ったパイロットの力、試させてもらうぜ!』







あとがき



 ようやく1話が終わりました。長かったぁ……。

 何せこの第1話、ワードのページ数に換算して24ページにも及ぶまでに至りましたが、いかがでしたでしょうか?

 読み返すと、つくづく自分のセンスのなさに泣けてくる自分です。はい。

 あと、この話で何人キャラが登場したかはよく分りませんが、今回登場したメンバーが暫くの主要メンバーです。

 詳しい設定は、じき書こうと思っているキャラ紹介や世界設定までお待ちください。

 とりあえず導入と言うことで戦闘シーン無しで終わりましたが、無論、次話では戦闘シーンから行く予定です。

 では、第2話で。


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コメント

初めまして! 刹那的虹色世界の管理人、月詠です!

コメントありがとうございました! 相互リンクの件はOKです!! こちらこそよろしくお願いします!!

しかし、Kanonベース?のガンダムSSを公開されているんですね! 自分も昔、趣味で書いていたことがありますが・・・…懐かしいです。

もうなんかそれだけで興奮です(ぇ こちらの更新も楽しみにさせていただきますね☆

Re: タイトルなし


>相互リンクの件はOKです!! こちらこそよろしくお願いします!!
相互リンク了承、ありがとうございます。
早速、こちらもリンク貼らせて頂きますね。改めてよろしくお願いします。

>自分も昔、趣味で書いていたことがありますが・・・…懐かしいです。
そうなのですか? 是非拝見してみたいですね。
展開は頭に浮かんでるんですが、依然時間が足りない。なんとか更新して行こうと思っていますが……。
まだまだガンダムSESは展開させていくつもりです。
良ければ、読んでみてください。

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