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ガンダムSES 第2話 『始動』 (3) 

WR本部 医務室




 WR本部の医療機関は2つある。一つは医療センター、もう一つは医務室。後者がWR本部内の施設に3箇所ほど設けられている。

 前者の医療センターは入院設備や手術室、エマージェンシー・ルームER集中治療室ICUまでも備え、高度な医療を受けることが出来る場だ。

 さすがに大病院クラスの病室やベッド数は備えていないが。

 後者の医務室は、風邪やインフルエンザ(流行性の場合は司令室へと報告され、感染者は完治するまで私室での待機が固く命じられるが)といった軽い病気の患者。

 または入院で高度な治療は必要としない軽傷を負った患者達が訪れる事になる医療機関である。

 これもまたレジスタンスとは思えない設備を持った施設ではあるが、8人の各方面の専門医と15人の看護士、そして衛生兵経験のある元軍人などが協力して運営している。

 そして、模擬戦において決着の際に頭を強く打ち脳震盪を起こした祐一は、医務室の方に運び込まれていた。



 頭を打った際に切ってしまった頭部には包帯が巻かれ、痛々しい姿を晒してはいるが重大な問題は発生していないため、医療センターではなくこの医務室へと運び込まれたのだ。

 しかし、医師たちの楽観的な診察とは裏腹に、既に模擬戦終了から1時間近く経過しているが、未だに祐一は目を覚まさない。

 医師は疲れているだけだろうと言うが、ここに運び込まれてからずっと祐一に付き添って看病していたWRのパイロットの1人である水瀬 名雪は心配そうな表情で祐一の寝顔を見つめている。

 医師は祐一には大事はなく、暫くすれば直に目が覚めると断言していたが、数時間も目を覚まさないままでいるというのは本当に大丈夫なのだろうか。

 不安ばかりが頭をよぎり、10分ごとに祐一の顔を覗き込んでみるが、一向に目を覚ます気配を示さない祐一。

 しばらくの間覗き込んでから、こんな風に自分ばかり焦ってもしかたのないことなのだと思い直し、丸椅子に座りなおすという動作をもう何回繰り返したのか、名雪は覚えているはずもない。

 幸い、この医務室には誰もいず(医務室なのに誰もいないというのはどうと思うかもしれないが、隣の休憩室に医者は居たりする)、名雪のこんな行動を咎めるものはいないが。

 そして、名雪がまた不安が高まり、もう一度祐一の顔を覗き込もうとしたその刹那に、医務室の自動扉が開く。



「名雪、相沢君はどう……って、何してるの、あなた」



 それはWR司令官である香里だった。そして彼女が引き連れるように、その後ろには北川、そして名雪にとっては同僚だが、目を覚まさない祐一のとっては見かけない青年の姿がある。

 それはさておき、扉が開いた音がした瞬間、名雪はびくっ、と体を撥ねさせ、すごい勢いで丸椅子に座りなおした。



「な、何でもないよっ!」



 手をぱたぱたと振りながら、取り繕う名雪。

 さすがに恥ずかしかったのだろう、端から見れば名雪が眠っている祐一の顔を覗き込むという行為は、まるで寝込みを襲っているようにも見えなくもないからだ。

 天然系である名雪にもその自覚はあったらしい。



「どうした、水瀬。顔が赤いぞ」



 そんな慌ててつくろうような様子も、顔を真っ赤にしていては全く意味を成さないが。

 近づいてくる北川に指摘されて、すぐにぱん!と心地いい音がするくらいの勢いを持って両手で顔を隠す。

 その行動でさっきまでの名雪の様子が、ある程度予想できた香里は、はぁ、と溜息をつく。

 まるで高校生みたいなラブコメ劇場を想像してしまったのだから、当然の溜息ともいえなくもないが。



「それで? 相沢君はどうなの、名雪」


「う、うん。お医者さんのお話だと、大事はないから、直に目を覚ますだろうって」


「そりゃ良かった。ちっ、幸せそうな寝顔しやがって」



 2人と共に訪れていたもう一人の青年が憎たらしく祐一の顔を見ながら言った。

 香里もまた悠一の顔を一度覗き込んだあと、苦笑気味の表情を浮かべて、ベッドの近くの壁に備え付けてある折りたたみ式の椅子を組み立て、そこに座る。

 と、話が一区切りついたことを見計らった香里が口を開く。



「実は共和国から要請が今さっきあったから、お見舞いがてらここに来たんだけど……」



 ちらり、と祐一の方を香里は見る。

 当然ながら、まだ眠り続けている祐一がベッドの上にいる。

 WR司令官としての重責を担う香里には、模擬戦で負傷したパイロット1人をわざわざお見舞いに来る暇などない。

 そして大体の作戦の概要は香里からではなく、大体栞か美汐から伝えられることが大半だ。

 しかし、何故か香里がわざわざ部下を訪れるような形で、共和国の要請―――つまり作戦を伝えに来たのには、何かあるな、と名雪は思った。



「まぁいいじゃないか。 どうせ今は詳しい話はまだ出来ないんだろ? だったら、相沢には目覚めた後で話してやればいい」



 香里の後ろに立っていた北川の提案に、香里も「まぁ、それでいいか」と賛成する。

 それじゃあ、と香里は前置き。名雪たち作戦部隊員の表情が少し引き締まっていた。



「これから話す内容は、南アジリア共和国大統領よりの“機密大統領令”。これについてはWR内でも最高機密トップシークレットとするので、そのつもりでね」



 作戦部隊員(祐一を除く)3人は驚く。

 WRの作戦や行動は、帝国軍事政権打倒の最終目標の下に、独自の作戦を立案したり、時には密かな支援を受ける南アジリア共和国諜報機関からの要請を下に作戦を行ったりする。

 WRは非公式な機密作戦部隊として南アジリア共和国の指揮下にいるというのはWR内でも周知の事実だ。

 しかし、帝国にとってはこんな無法者集団と大差ない武装集団テロリストを、仮想敵国の妨害を目標としているとはいえ、公な大統領がこれを承認している事実が知られれば、当然ながら国際的な大批判は免れない。

 それを避けるために、言い方は悪いが責任逃れや悪名を被っても平然とできる情報機関の独自の命令によって動いていた、ということにすれば国としての責任をある程度は免れることできる。

 このような理由から、共和国のトップである大統領からこういう命令が出ることは滅多に出ることがないこと、そして発令されること事態がかなりの異常事態であるということだ。

 事実、過去に機密大統領令が発令されたのは2桁にいくか行かないか、というぐらいのものだ。

 共和国成立からまだ歴史は浅いとはいえ、極めて重大な状況のみにしか発令されない、この機密大統領令の意味。

 まさか、とここにいる作戦部隊の3人は思った。



「全面戦争が、始まるってのか?」



 口に出したのは、祐一は名も知らぬ青年だ。

 彼の名は斎藤 健登。前から言っているように、WRのMSパイロットの1人だ。



「分らない、けど」



 歴史を見れば明らかだ―――香里は口にはしなかったが、この場に(目覚めて)居る4人は、その言葉を理解している。

 なんてこった、と斎藤は思う。

 もちろんここで帝国に対する反乱―――つまり紛争規模を起こしている当事者が言うことではないとはいえ、自分達が行っているのはあくまで“レジスタンス活動”としてのものだ。

 帝国は敵とはいえ、民間人を殺傷する事になる無差別テロにも似たような馬鹿な真似はしない。

 しかし、全面戦争となれば、話は違いすぎる。

 建前としては民間人攻撃はタブーとされ、それを実行した場合は終戦後に戦争犯罪として裁かれることになる。

 しかし、それは“敗者”に対してのみだ。

 勝者の罪は恩赦され、敗者に対しては理不尽なほどの一方的な裁きが下される。

 これは歴史の常であり、勝者の特権とも言える。

 勝者がルールをつくり、歴史を作る。

 それは、敗者側の無差別な攻撃によってでた民間人の死傷者は全く無視され、勝者の民間人の死傷者のみが、被害者のように扱われ、手を下した敗者ばかりが非難される。

 そんな歴史を人類は繰り返し、また繰り返されようとしている。

 そして、機密大統領令が作りえた歴史―――それは戦争の歴史。

 この命令が下された後に、戦争、または紛争が起こらなかった歴史は存在しない。



「……それで、要請ってのはどういうものなんだ」



 暫くの沈黙が破られる。

 4人は驚き、その声の出所へ一斉に目を向ける。

 目を向けた先―――ベッドの上で先ほどまで眠っていたはずの相沢 祐一が目を開けて、香里の方を見ていた。



「祐一……、大丈夫なの?」


「ああ……、意識ははっきりしてる。 ―――っ!」



 祐一はゆっくりと起き上がろうとする、が、その瞬間に小さくうめき声を上げる。

 起き上がった瞬間に、包帯の下に隠されている傷が呻いたのだ。

 慌てて名雪がもう一度寝かせようと、祐一の肩に手をかける。



「だ、だめだよっ! まだ寝てた方がいいよっ!」


「だ、大丈夫だよ。少し痛んだだけ「そーだバカ、大人しく寝てろ」



 少し乱暴な口調で言ったのは斎藤だった。

 髪は男としても長くなく、ほぼスポーツ刈りに近い髪形で、今は少しそれが伸びてきている、そんな感じの髪型はさわやかなスポーツ少年のような雰囲気を出している。

 顔立ちも悪いほうでなく(モデルほどの美形というわけでも無いが)、彼女を作るには不自由しない、そのぐらいの顔立ちだ。

 どっちかといえば女顔でなく、男らしい、といった感じの顔立ちの男だ。



「お前は……?」



 初対面の祐一が訊いた。斎藤はああ、と思い出したかのような様子で言う。



「俺は斎藤。お前や北川、水瀬と同じくWRのパイロットさ。お前とは初対面だったな」


「彼はWR創設時からのメンバーでね。北川君とずっとコンビを組んできたのよ」


「おいおい、人を古参みたいな言い方するな。創設っつったって、たかが2年前のことだろうよ」



 香里の紹介に、苦笑い気味に訂正を加える斎藤。

 創設時、ということはこの斎藤も共和国の軍人だったんだろうか、と祐一は適当に考えてみる。

 WRという組織は非公式ではあるものの南共和国が割りと深く関与していることもあって共和国の元軍人が主要メンバーを構成している。

 もちろん、いろいろと訳あり・・・の構成員も少なくないが。



「それより」



 一瞬見せた、斎藤の柔らかい表情が再び真剣なものへと戻り、香里を見た。



「話を戻そうぜ。聞かせろよ、美坂。機密大統領命令の内容を」









神聖アジリア大帝国   ハートベット陸軍基地


 ハートベット陸軍基地は、大帝国の国内では最も大規模な軍隊が常駐している基地のひとつだ。

 理由は簡単、帝国国内でのレジスタンス活動が最も活発な地域における、最も重要な軍事基地であるためだ。

 そのため、このハートベット基地には帝国軍の主力部隊や精鋭部隊が常駐しており、どのような急変にもすぐに対応できるよう、そういった部隊がスクランブル体制で待機している。

 そしてこのハートベットに駐留する部隊の一つ、第6独立戦闘連隊―――通称、第6戦闘団―――の司令官である女性陸軍大佐が、基地内の通路を歩いていた。

 帝国陸軍が定める、開襟ネクタイ式に明るめのグレーを基調とした将官勤務用の第2種軍装はもちろんのこと、彼女の青みの入った背中にかかるぐらいの髪、そして端正な顔立ちが、士官学校首席卒業を成し遂げた知性を一層より深く醸し出し、彼女独特の雰囲気を周りへと振りまいていた。

 やがて目的の部屋の扉の前までたどり着くと、彼女はドアを2,3度ノックする。中からは返事が聞こえ、少しの間の後に扉が開く。

 開いた先には雪見と同い年か、少し年上ぐらいの女性がいた。彼女が扉を開けたらしい。



「ああ、深山みやま大佐、お待ちしていました。さ、どうぞお入りください」



 どうも、と深山と呼ばれた大佐は彼女に軽く会釈して導かれたとおり部屋の中へと入る。

 そこには、なにやら書類仕事をしていたらしい深山と同じく勤務用の軍服を身に纏い、ペンを片手に高級そうな肘掛け椅子に座っている男性の姿があった。

 男は入ってきた人物を見て、それが深山であると気付くとペンを置く。



「深山大佐。わざわざ呼び出してすまないな」



 深山と呼ばれている陸軍大佐、深山雪見ゆきみは被っていた軍帽を取り、それを腕と体の間に挟むと女性軍人に向かって敬礼した。



「とんでもありません。麻枝まえだ司令官」



 目の前に居る男性―――第9軍司令官を勤める麻枝陸軍大将は、顎を両手に乗せる。



「君を呼んだのは他でもない。実は、国境付近において大きな動きがあったのだ」



 麻枝は秘書官らしい先ほど扉を開けた女性に視線を送り、そして女性もまた頷くと、バインダーから複数枚の紙を取り出してそれを雪見に渡した。



「拝見します」



 断ってから、多くの写真と共に文字が並んでいる、その書類に目を通す。

 その雪見の表情はその書類を読み進めていくほどに段々と険しいものへと変わっていく。

 そして最後まで読み終えたところで、再び麻枝に顔を向けた。



「事実ですか?」


「残念ながらな。南の連中はこの国の上の人間よりは賢明だと思っていたが……。私の思い違いだったらしい」



 呆れた表情で麻枝は言った。

 雪見が再び書類に目を落とす。その間に、麻枝は再び秘書官に視線を送った。

 それを受けた秘書官が何かのリモコンを取り出すと、なにやら操作をし始める。

 すると高い機械音と共に横の壁にスクリーンが下りてきて、同時に部屋が薄暗くなった。

 そしてスクリーンには映像が映る。その映像は地図ではあったがアジリア大陸全体ではなく、このハートベット周辺を拡大したものだった。

 真中下にはこのハートベット基地が青く表示され、その周辺にもいくつかの青いフリップが表示されていた。



「そこに書いてあるとおりだ。我々はレジスタンス鎮圧を急がねばならない立場になった。もはや世間体を気にしている場合ではない。大規模な戦力により、一気にレジスタンスを鎮圧、北方の戦力を南へ回さねばならん」


「それで私たちに出撃命令、ですか」


「そういうことだ。君たち第6戦闘団が先々発動される鎮圧作戦の先鋒となるだろう。それにさきがけ、レジスタンス組織の中でも最も大規模な組織の本拠地に向け、威力偵察を行ってもらいたい」


「威力偵察……ですか?」


「そうだ。戦力は分艦隊規模……無論、MSの投入も許可する。まぁ、君が必要と思うだけの戦力を連れて行けばいい。君のことだ、威力偵察に必要な戦力ぐらい、百も承知だろう。指揮官の選定も君に任せよう」


了解しましたイエス、サー


「くれぐれも油断はしないでくれ。相手はレジスタンスだが、これまでに行った小規模部隊による鎮圧を全て撃退するほどの力を持っているような連中だ。私は君を信頼しているが、くれぐれも部隊選抜は慎重に行ってくれ」


「分っています。必ず良い結果を司令にお渡しいたします」


「うむ。ああ、それともう一つある」



 今思い出したかの様子で言うと、麻枝は執務机の引き出しを開きだし、何かを探し始めた。

 それを雪見が怪訝そうな様子で眺めていると、ようやく目的を見つけたらしく、麻枝はそれを引っ張り出す。



「私に報告が来たのも、つい先日なのだがね」



 麻枝は引っ張り出した目的―――一枚の書類を再び雪見に差し出した。

 そこには1枚の写真とともに大まかな経歴が書き込まれたものだった。

 そして、雪見はこの書類のある一点に気付いて驚く。



「これは……」


「ああ。その女性は近衛軍に属するMSパイロットだそうだ。腕は帝国でも五指に入る実力、機体もそれ相応の者が与えられている……らしいがな」



 麻枝は近衛軍という存在が余り気に入らないのか、不機嫌そうに言う。

 近衛軍とは、帝国建国当時から創設されている皇帝直属の皇族護衛部隊のことである。

 元々は帝国全軍の精鋭約200人からなる少数精鋭の部隊であるが、時が移るにつれては帝国軍のエリート中のエリート部隊としての戦闘部隊として、帝国軍の象徴的な存在となっている。

 そして現在は総勢1万余りからなる部隊にまで大規模化し、帝国正規軍より完全に独立した独自の指揮系統、独自の海上・陸上・航空など、多岐にわたる戦場に軍を展開させることのできる独自の艦隊、独自の兵器開発まで行われているほどの部隊となっている(さらに言えば1万余りというのはあくまで戦闘要員のみの人数に過ぎず、開発などに携わる技術者などを含めればその数はさらに増える事になるが)。

 それゆえ、正規軍とは何かと対立することが多く、正規軍の司令部の命令には近衛軍が従わないことも多く、自分勝手な行動を取ることも多いために、何かと正規軍の上層部はもちろん、戦闘指揮官たちからも嫌われていることが多い。

 麻枝もその1人で、幾重もの戦場を経験した彼にとって、近衛軍は正に目の上のたんこぶというわけだ。

 その辺の事情は十分に理解している雪見だが、怪訝そうな表情は変わらない。



「何故、近衛軍所属のパイロットの書類をわたしに?」


「ああ、それがな……」



 麻枝は口ごもり、少し考える素振りを見せてから、口を開いた。



「今回の威力偵察作戦を参謀本部に申請したら、近衛軍司令部がこの作戦への参加を決めたそうでな」


「……何故です? たかだか敵対地下組織への威力偵察に、元々は帝族警護のための近衛軍が参加するなど」


「分らん。全く分らん。ただ近衛軍から参謀本部に作戦参加許可の要請があったらしくてな、それが受理されて私のところにも報告が来たというわけだ」


「はぁ、しかし大丈夫なのですか? 噂によれば、近衛軍は、我々常備軍の指示には全く従わない自分勝手な連中と聞いているのですけど」


「ああ、それに関しては問題ない。近衛軍から、このMSは完全に君の指揮下に入ると言ってきている。何をさせようが、このMSパイロットが何か文句を言うことは無いし、こちらからも何も言わないと言ってきている」


「……ますます分りかねますね。なおさら何故我々の指揮下に、それもこのような小さな作戦に参加してくるんです?」


「さあな、分りたくもない。まぁ余り気にしないことだ。君の指揮下に入るのは間違いないようだし、実力は確かなのだろう。君の好きなように使ってやれば良い。問題があったり、使い物にならないのなら使わなければ良い話だしな」


「……了解しました」



 話が終わると、再び雪見は麻枝に向けて敬礼する。麻枝もそれを返すと回れ右をして、軍帽を被りなおしつつ扉へ向かって歩いていき、部屋から出て行った。

 雪見が出て行くと、麻枝は大きく息をついて肘掛け椅子の背もたれに大きくのしかかった。



「司令、お疲れですか?」



 その様子を見ていた秘書官が言った。

 麻枝は体勢を直さないまま言う。



「まぁな……。最近はレジスタンスの活動も活発になってきている。それに、国境ではこのような事態になっているとなってはな」



 麻枝は執務机の上に散らばっている中の、先ほど雪見に渡した書類と同じものに目を向けた。

 そこに書いてあるのは、国境近くの南の軍隊の動向を示したもの。

 そして、その書類は国境への大規模な軍の移動、集結を示している。



「南の連中め、何を考えている……。再び大陸で戦争が起きれば、おそらくその戦争はどちらかが滅ぶまで終わらない。それがわかっているのか?」



 麻枝は机をくるりと回転し、そして立ち上がって窓の外の景色を眺める。

 その景色は平和そのもので、このようなものものしい軍事基地という場所においても野鳥達はいつもどおりの囀りを響かせていた。



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